それから、男の中の一人が、雪をつかんで、ゆっくり、ゆっくり、私の身体をこすり始めた。
「折れねぇようにな。」
仙人はまたしても言った。最初は、手の先、脚の先、それから腕、脚・・・すると、心臓がぴくんと動き、血がゆっくり指先、足先にかよってくるのがわかった。
「部屋に入れるべ。火なんぞ焚いちゃだめだぞ。溶けちまうからな」
風がないというだけの、極寒の漁師小屋だった。そこで、また、男はゆっくり、私を雪でこすっていった。助かるかもしれない、というかすかな希望がよみがえる。
「心臓が動いた」男が叫んだ。
「おう、ゆっくり、ゆっくりもどせよ。魚と同じなんだからな。うまく解凍すれば、泳ぎだすんだ。急いだら、死んじまうぞ」
そこまで聴いて、私は深い眠りに落ちた。

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